はじめに
数か月前に海外で先行リリースされていた「Apple Intelligence」が、ようやく日本語でも利用できるようになりました。とはいえ、現段階で対応しているのは最新世代のiPhoneなど限られています。わざわざ買い替えるほどの価値があるのか、どんなことができるのか──そう思っていた筆者も、実際に使い込むうちに評価が180度変わりました。
Apple Intelligenceとは何か?
“アプリを丸ごと底上げ”するOSレベルの統合
Apple Intelligenceという専用アプリが増えるわけではありません。設定をオンにするだけで、メモやメールなど既存アプリがAI機能を呼び出せるようになり、操作感はそのままに性能だけが一段アップします。まさにOSと一体化したアドオン、というイメージです。
なぜ上位モデル限定なのか
Apple Intelligenceは基本的にオンデバイス処理を前提としているため、高い演算性能やメモリを持つ最新モデルに限られています。クラウド依存が減ることでプライバシー面の安心感は増しますが、旧機種では荷が重いというわけです。例外はChatGPT連携で、このときのみ外部サーバーと通信します。
日常で実感できる即戦力機能
“写真を文章で検索”がもたらす即効性
カメラロールに山ほど写真を溜め込む派に朗報なのが、自然文検索。撮影日やアルバムを手繰る必要はなく、「去年の京都旅行で食べた抹茶パフェ」など曖昧なワードでも該当写真を瞬時に提示します。大量データを抱えるほど恩恵は大きく、個人的には最も即戦力だと感じた機能です。
メモ:要約・箇条書き・トーン変更がワンタップ
標準のメモアプリでは、入力済みテキストをAIが解析し、要点抽出・リスト化・表組みを一瞬で生成。文章の語調も即座に切り替えられます。数日間試しただけで、非対応端末に戻った際に”編集作業が重く感じる”ほどの依存度に。特に要点まとめ機能は校正ツールとしても秀逸でした。
左:AppleIntelligenceのマークをクリックすると作文ツールが起動する
右:文章を選択し、校正や書き直し、文章の語調を「フレンドリー」「プロフェッショナル」「簡潔」に変える、、など
左:要約機能を使った例
真ん中:要点機能を使った例
右:リスト機能を使った例
メール:要約付き通知とスマートリプライで取りこぼしゼロへ
受信トレイが埋もれがちな人にとっては、優先度の高いメールを自動抽出し、通知にサマリーまで表示してくれるのが救い。さらに「スマートリプライ」が文脈を理解した下書きを用意してくれるので、返信漏れや遅延を防げます。惜しむらくは、現状Apple純正メールに限られる点。Gmailなどサードパーティーにも開放されれば、ビジネスシーンでの存在感は一気に高まるでしょう。
Siriが別物に化けた——ChatGPTとも連携
Apple Intelligenceの真価は、音声アシスタント「Siri」が最も享受します。以前は曖昧な問いに弱かったSiriが、今では文脈を踏まえた深い質問にも食らいつき、必要に応じてChatGPTへバトンタッチ。結果、回答精度も網羅性も一段上がりました。設定項目が両者で統合されているため、どこまでがSiri強化でどこからがApple Intelligenceなのか、もはや境界は曖昧です。
創造的な機能も充実
Image Playground:テキストから画像・ジェン文字を生成
画像生成もApple Intelligenceの得意分野。条件を文章で指示するだけでイラストやオリジナル絵文字(ジェン文字)が完成します。操作はシンプルですが、生成物のテイストはやや”海外風”。他社生成AIと比べ新鮮味は少ないものの、iPhone標準で完結する手軽さは魅力です。
クリスマス+ディスコ#imageplayground #Appleintelligence
←元写真 AI生成→ pic.twitter.com/615sMmimSY
— Apple Intelligence Academy (@AppleIntel30340) April 14, 2025
iPhoneから飛び出す宇宙#imagewand #Appleintelligence
←元スケッチ AI生成→ pic.twitter.com/2z4sHL34wY
— Apple Intelligence Academy (@AppleIntel30340) April 14, 2025
ビジュアルインテリジェンス&クリーンアップツール
身の回りの物をカメラで撮って検索できる「ビジュアルインテリジェンス」や、Google Pixelでおなじみの”消しゴムマジック”に似た被写体消去も搭載。目新しさこそないものの、iPhone単体で完結する点がポイントです。
評価と展望
“Apple Intelligence前提”の世界を見据えて
個別機能だけを取り上げれば他社スマホや外部ツールで既視感のあるものも多いものの、それらが最初から統合され、標準アプリが丸ごと底上げされる──このインパクトは小さくありません。今すぐ買い替えなくても困らないかもしれませんが、将来的に全モデルへ展開された後は、非対応環境へ戻るのが辛くなるはず。
現状は”Appleブランドへの信頼”が推進力
まだβ的な側面が残り、不透明な部分もあるのは事実。それでも「Appleがやるなら生活が便利になるはず」というブランドへの信頼感がユーザーを引き寄せています。本来なら新型iPhoneと同時に大々的に披露し、完成度を示せれば理想的だったでしょうが、ひとまずは”進化の起点”として注視しておきたいところです。